陰翳に宿る古民家の魅力

住まい

古民家にいると、なぜあんなにも落ち着くのでしょうか。
木の空間だからでしょうか。
しかし、古民家好きさんであればおわかりかと思いますが、同じ木造でも新築では味わえないような、落ち着きといいますか、心が安らぐといいますか、古民家には不思議な魅力があります。

今回は、そんな古民家の魅力についてまとめてみました。

陰翳礼讃

古民家って、古いし、暗いし、寒いし、、、魅力がわからない、という方、
谷崎潤一郎の”陰翳礼讃”を未読でしたら、おすすめですのでぜひ読んでみてください。
古民家好きの方でも、もし未読でしたら、ぜひ一読をおすすめします!

なぜなら、
谷崎潤一郎の陰翳礼讃には、
古民家の魅力がぎゅっと詰まっているからです。

谷崎は、陰翳礼讃の中で、西洋人と東洋人の美に対する意識の違いを述べています。
西洋人は手垢やサビのついたものを不潔だとみなし、ピカピカに磨く。
一方、東洋人は垢を保存し、美化するのだと。

“われわれは人間の垢や油煙や風雨のよごれが附いたもの、
ないしはそれを想い出させるような色あいや光沢を愛し、
そういう建物や器物の中に住んでいると、奇妙に心が柔らいで来、神経が安まる。” 
-谷崎潤一郎 陰翳礼讃より-

そうなんです、古民家にいると、なぜか心が柔らいで落ち着いてくるのです。
それは、わたしたちが手慣れたものに、愛着や安らぎを求めるからなのかもしれませんね。

家のつくりは夏をむねとすべし

日本建築は、”屋根の建築”とよく言われます。
西洋建築と比較すると、屋根のパーツが大きくデザインも多様です。そして、屋根自体が大きな庇をつくっていたり、屋根とは別に庇が造られていたりもします。

“つれづれなるままに~”で有名な徒然草。
その中で吉田兼好は家屋の造り方について綴っています。

“家の作りやう(よう)は夏をむね(旨)とすべし 冬はいかなる所にも住まる 暑き比(ころ)わろき(悪い)すまひ(住まい)は たへ(耐え)難き事なり” -吉田兼好 徒然草より-

「家のつくりは夏をむねとすべし」、ですね。

日本の家屋は、庇を大きくとって夏の日差しが部屋の中に入ってくるのを遮り、
そして太陽高度が低い冬は部屋の中に日差しが入り込んでくるような造りとなっています。
また、日本は雨が多い気候であることから、外壁の劣化を防ぐためにも庇が大きく造られています。

古民家は、”夏をむねとすべし”の造りで、屋根が大きく、庇は深く造られています
庇が深いと建物の中は暗くなります。部屋の奥へ行けば行くほど、暗くなります。
そして、古民家の多くは窓側に廊下があり、部屋と外部は廊下を介して繋がっています。

廊下と部屋を仕切る建具は障子が使われています

外部からの光は障子を通すことで、柔らかい光となり部屋の中に入ってきます。

直射日光ではなく、紙の障子により柔らかく調整された光です。

“そして、室内へは、庭からの反射が障子を透かしてほの明るく忍び込むようにする。
われわれの座敷の美の要素は、この間接の鈍い光線に外ならない。
われわれは、この力のない、わびしい、果敢ない光線が、しんみり落ち着いて座敷の壁へ沁み込むように、わざと調子の弱い色の砂壁を塗る。”
-谷崎潤一郎 陰翳礼讃より-

そうです、古民家が落ち着く要因として、障子という素材により造られる光の加減があるのです。

”もし日本座敷を一つの墨絵に喩えるなら、障子は墨色の最も淡い部分であり、
床の間は最も濃い部分である”  -谷崎潤一郎 陰翳礼讃より-

古民家は部屋の奥に行けば行くほど暗くなります。

その部屋の中で障子が最も明るい部分であり、壁に近い床の間は最も暗い場所となります。


その空間で、”最も濃い部分である” 床の間に、金色の掛け軸なんぞ掛かっておれば、その金色がリフレクターとなり空間を引き締めてくれる、のです。
情景が眼に浮かんできます。余計なものなど一切ない、静寂の中にある美、とでもいいましょうか。

古民家の魅力は、無駄なものを取り除いた、陰翳の中に宿っているのですね(´∀`=)

古民家のデメリットをメリットに

古民家はこのように暗いので、部屋の中は日中でも照明をつけないと暗い、、、たしかにそうです。

現代の家は、直射日光が入ってくるように明るいつくりが主流なので、日中はもちろん照明は不要です。高断熱高気密で冬は暖かく電気代も抑えらますし、経済的です。

電気代がかかる、部屋の中が暗いというのは、古民家のデメリットです。

風通しが良い

夏をむねとすべし”の古民家、日差しが直接入り込まない空間ですので、真夏の夜は窓を開けて、扇風機があれば夜をすごせます。(※個人差あります)
家の中に風が通るようにつくられていますので、風通しもよいです。

こういった点では、古民家は現代の住宅よりも環境に優しい造りなのではないかと思います。

そういえば子供の頃、夏休みに祖母の家へ行くと、蚊帳をかけて夜寝ていました。
当時はまだエアコンをつけてる家が少なかったです。
いつのはなし?って、かんじですよね、、、。まぁ、古き良き昭和の時代です( ´ ▽ ` )

寒さ対策

また、これもよく言われますが、古民家の冬は寒いです、、障子や襖から冷気がガンガンはいってきますので。。
そこで、冬には炬燵と石油ストーブの出番です!
私は、古民家には炬燵と石油ストーブが最適だと思っています。

石油ストーブは灯油を購入しないといけない、といったデメリットがありますが、一方でメリットもたくさんあります。

・ストーブはやかんでお湯が沸かせて、乾燥対策にもなります。

・万が一の災害時、電気がストップした場合に便利です。

・レトロなデザインのストーブであれば、尚更、古民家にぴったりです。

写真はトヨトミの石油ストーブ。レトロなデザインで素敵ですね( ´ ▽ ` )

写真:TOYOTOMI公式ホームページより

ちなみに、母はストーブで沸かしたお湯を湯たんぽにして、就寝しているようです(・∀・)

古民家の薄暗い部屋の中で、ストーブの火がゆらゆらと柔らかく部屋の中を照らす具合も、良いのです。火を見ると落ち着きますし。

暗さ対策

古民家の暗さについて、照明で天井から明々と部屋を明るくするよりも、局所的に手元を照らしたり、部屋の隅に照明器具を置いて、部屋全体を柔らかく明るくするのがおすすめです。

できれば、部屋の隅にイサム・ノグチのakariなどが置いてあれば、
たまりません(((o(*゚▽゚*)o)))
和紙を通して柔らかな灯りが広がる空間、落ち着きますね。

ストーブの火や、柔らかい照明でほんのりと照らされた古民家の空間、捉え方次第では寒く暗い古民家が魅力的な空間に見えてこないでしょうか。

雪見障子

雪見障子

古民家の建具は、当時の職人さんや大工さんが寸法に合わせて造ります。
祖母の家にあった雪見障子は、この家が造られた時に大工さんが造ったそうです。
大正時代に造られて100年近く経過していますが、今でも現役で使えています。

そして、この陰影がつくれるのは古民家だからこそ、ではないでしょうか。

古民家は考え方次第で、デメリットをメリットへ変換することができます。

最後に、谷崎のこの一文に古民家の魅力が宿っているのだと、あらためてかんじています。

美は物体にあるのではなく、物体と物体との作り出す陰翳のあや、明暗にあると考える。
-谷崎潤一郎 陰翳礼讃より-

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